誰もいなかったので、俯いて食べていた。皿の柄ばかり妙に鮮明に覚えている。 寂しいとは思わなかった。寂しくないという事を、知らなかった。 二人きりだった。 向かい合わせに座って食事をするのが何だか辛くて、いつも俯いていたのを覚えている。 決して彼と食事をするのが厭なのではなかった。 ごく当たり前の事を当たり前にされて、戸惑っていたのだ。 一人きりだった。 一人で食事をするのは随分昔から慣れていた。ただ話し相手がいないので、やはりいつも俯いて食べていた。 一人の食事に慣れている自分を哀れむ気持ちなど欠片もなかった。 ただ、カレーに飽きたことを話す人がいないので、いつまで経っても別の料理が作れなかった。 ふたりぼっちだ。 今は、ふたりぼっちだ。 二人きりは結局一人と一人が同じ場所にいたようなものだった。 ふたりぼっちは、二人が同じ場所にいるのだと、久保田は思う。あの時一緒に食事をしてくれていた人との関係が、空虚だったのではない。彼は頼る事を教えてくれた。頼りたくないと思う気持ちも。もっと単純なところでは、肉親の情も。 今の状況が特殊すぎる。 全く別の生命体だと思うのに、同じ存在であるように感じる。 俯かずに食事をしている。 偶に一人で食事をすると、つまらないと思う。 カレーに飽きたと呟いて、返る声がある。 「何か、凄いかも」 「そりゃすげぇだろうよ。五日目のカレー」 そうじゃないんだけどなぁ。そう呟くのはやめておく。 実際、賭けのつもりであたためてみた五日目のカレーの味も凄かったので。 |
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