でも今は分かる。確かに心配だ。 「そんじゃケース1。すみませーん、アサニチ新聞の者なんですけどォ、只今新規にご購読契約いただきますと洗剤のセットが」 「お断りします」 「はいよく出来ました。ケース2。すみません、お宅のベランダの物干し台、腐ってて危ないですよ」 「お断りします」 「オッケー。じゃラスト。ケース3。あ、誠人ぉ? あたし、ケイコ。ちょっと開けてよぉ」 「…くぼちゃんキモイ」 そこは天下無敵の「お断りします」でしょ。 ていうかキモイって何、キモイって。 …いやまあ、確かにキモイけどね。 「あのな、俺だってそこまで常識欠けてねぇぞ。留守番くらいちゃんとできるっつーの」 そう言って主張されてもどうも信じられない。 だって猫が常識あると思わないし、普通。ていうかまだこいつの事よく知らないしなぁ。 まともな一般家庭で育ってる訳がないから、どこでどう常識が欠けてるか分からない。 「…なんだよその目」 「いや、別に」 まあ、警戒することは知ってるみたいだからいいか。翔太ももうすぐ帰ってくるだろうし、こいつが完全に一人なのは多分一時間かそこらだ。 …ていうか、誰かにくっついて出てっちゃっても怒れないけど。 なんたって猫だし。 「いつもの所に一万円入ってるから、何かあったら使いなさい。腹減ったからとかでも使っていいから」 逃亡費にしても、ね。 「ん」 時任は素直だ。まだ触れようとすると身を引くくせに。 「じゃ、行ってきます」 「くぼちゃん」 「ん?」 「ケイコ、追い返していいのか?」 ケイコって誰だっけと一瞬戸惑った。 あー、翔太と葛西さん以外の他人の名前出したの、初めてだっけ。すっごい適当に言ったんだけど、まあいいか。 「いいよ。力いっぱい追い返して」 頷いたら時任は目を丸くした。 テリトリーに入る他人は攻撃する。それが猫でしょ。だから猫らしくね。 「留守番頑張って」 時任、俺が帰ってくるまでいるかな。 ケイコがいつくるかどきどきしてたりして。 まあ猫だから、気紛れに出てくかも知んないけど。 …どっちでもいいや。 |
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